新しい年が明け、2010年となりました。今年こそは景気が回復するのでしょうか。こんな不況と連動し、リゾート産業も氷河期を迎えています。シーガイアやハウステンボスでは、しばらく赤字状態が続いているようです。他のリゾート施設も殆ど同じ状態です。しかし、「東京ディズニーランド」だけが確実に入場者数を増やしています。東京ディズニーランドは97.5%のリピート率を誇っています。つまり「ここに初めて来た」と言う人は年間で3パーセントも満たないのです。そして10回以上を超える来場者が6割もいるらしいのです。お土産だけの売上で、年間675億円にもなるそうです。
では、なぜこの不況時に東京ディズニーランドだけ来場者が多いのでしょうか?
「マニュアルを越えたところに感動がある」と東京ディズニーランドの母体である株式会社オリエンタルランドの相談役・堀 貞一郎顧問がこんな話をしていました。
東京ディズニーランドにある若い夫婦が来ました。園内のレストランで彼らは、お子様ランチを注文したのです。お子様ランチは9歳以下とメニューに書いており、子供のいないカップルにはマニュアルでお断りする種類のものです。当然、「恐れ入りますが、ここのメニ ューにも書いておりますが、お子様ランチはお子様用となっておりまして、大人の方には少し物足りないかと思われます・・・」というのがマニュアルです。
しかし、アルバイト(キャスト)の青年は、マニュアルから一歩踏み出して尋ねました。
「失礼ですが、お子様ランチは誰が食べられるのですか?」
「実は・・・死んだ子供のために注文したくて」と奥さんが答えました。
「亡くなられた子供さんに・・・」とキャストは絶句しました。
「私たち夫婦は子供がなかなか産まれませんでした。求め続けて、やっと待望の娘が産まれましたが、体が弱く一歳の誕生日を待たずに神様のもとに召されたのです。子供の一周忌に、いつかは子供を連れて来ようと話していたディズニーランドに来たのです。そしたらゲートのところで渡されたマップに、ここにお子様ランチがあると書いてあったので思い出に・・・・」 そう言って夫婦は目を伏せました。
キャストは「そうですか。では、どうぞ召し上がってください」と応じました。そして「ご家族の皆さま、どうぞこちらのほうに」と 四人席の家族テーブルに夫婦を移動させ、それから子供用のイスを一つ用意しました。そして「子供さんはこちらに」と、まるで亡くなった子供が生きているかのように小さなイスに導いたのです。しばらくして運ばれてきたのは三人分のお子様ランチでした。キャストは「ご家族で、ごゆっくりお楽しみください」と挨拶してその場を立ち去りました。若い夫婦は失われた娘との日々をかみしめながらお子様ランチを食べました。
このような行為はマニュアル破りの規則違反です。しかし、東京ディズニーランドは彼の行動を誰もとがめません。マニュアルは基本でしかありません。それを越えるところに感動が潜んでいるのです。
後日、この夫婦から手紙が届きました。
「お子様ランチを食べながら、涙が止まりませんでした。まるで娘が生きているように家族団らんを味わいました。娘との家族団らんの体験を東京ディズニーランドでさせていただけるとは、夢にも思いませんでした。これから、二人で涙をふいて生きていきます。また、ディズニーランドに必ず行きます。今度はこの子の弟か妹を連れて、きっと遊びに行きます」という内容でした。
ディズニーランドの産みの親であるウォルト・ディズニーが、ディズニーランドに求めたもの。それはお客様が映画の世界に入り込み、一緒に感動を作り上げていくことでした。だから東京ディズニーランドではお客をゲスト(共演者)と呼び、従業員をキャスト(出演者)と呼びます。キャストはいつも感動を探しています。
人を感動させるところには、人が集まります。キャストのメンバー自身も、人に喜んでもらえることで 自分の存在価値を感じています。だから彼らは自発的なのです。それが生きていることへの確認になります。誰かに親切にすることで「ありがとう」や「笑顔」が返ってくる、それがやりがいと生きていることへの実感につながるのです。
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